ここではジャガーのJ01GA型の初代Sタイプ [4.0-V8] に搭載されているGC型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
GC型の自然吸気エンジン諸元
![]() J01GA型 Sタイプ 主要諸元まとめ |
|
車両型式 | GF-J01GA |
---|---|
車名&グレード | Sタイプ [4.0-V8] |
エンジン型式 | GC |
種類 | V型8気筒 |
排気量 | 3996cc |
内径×行程 | 86.0mm×86.0mm |
単気筒容積 | 499.5cc |
ボアストローク比 | 1.00 |
圧縮比 | 10.7 |
燃焼室容積 | 51.5cc |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 285PS/6100rpm |
最大トルク | 40.0kgm/4300rpm |
まず基本的な成り立ちとして、GC型エンジンはボア(内径)86.0mm、ストローク(行程)86.0mm、ボアストローク比1.00のスクエア型エンジン(ピストン径とストローク量が同一)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型とショートストローク型の美点の良いとこ取り、若しくは欠点の悪いとこ取り、特にこれと言ってどうとも言えないバランス型の万能エンジンとなる素質があります。
数多あるボアとストロークの組み合わせの中で唯一、双方が同じ寸法のときにだけ現れるスクエア型はその存在の希少性こそが最大の魅力であると言えましょう。
1気筒あたりのシリンダー容積と圧縮比を使って燃焼室容積を計算してみますと、今回のGC型エンジンの場合の計算式は499.5cc÷(10.7-1)となり、燃焼室容積は51.5ccになります。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
---|---|
馬力の変遷 | 240.1PS → 285PS |
トルクの変遷 | 40.0kgm → 33.5kgm |
リッター馬力 | 71.32PS/L |
リッタートルク | 10.01kgm/L |
今回の参考車両であるSタイプのV型8気筒3996cc、圧縮比10.7でハイオクガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6100回転のとき最高出力285馬力を、4300回転のとき最大トルク40.0kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4300回転での馬力は240.1PS、最高出力が発生する6100回転でのトルクは33.5kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は71.32PS/L、トルクは10.01kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積499.5cc)あたりの出力は35.6PS、5.0kgmです。
排気量1リットルあたりの馬力が71.32PS/L、トルクが10.01kgm/LであるGC型の自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 7 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。
排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
---|---|---|---|---|
Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
86.0mm | 86.0mm | 3996cc | 10.7 | 1.00 |
ボアアップによる排気量アップ | ||||
86.5mm | 86.0mm | 4043cc | 10.81 | 0.99 |
87.0mm | 4090cc | 10.92 | 0.99 | |
87.5mm | 4137cc | 11.04 | 0.98 | |
88.0mm | 4184cc | 11.16 | 0.98 | |
88.5mm | 4232cc | 11.27 | 0.97 | |
89.0mm | 4280cc | 11.39 | 0.97 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の86.0mmから0.5mm刻みで+3.0mmまで拡大(86.0mm→89.0mm)した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと1.00のスクエア型からショートストローク型へとシフトしていきます。GC型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.00から0.97に変化するという具合です。
平均ピストンスピード
|
続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが86.0mmのエンジンが最高出力を発生する6100回転での平均ピストンスピードは17.5m/sとなり、これは1秒間に17.5メートル(時速にすると63.0km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4300回転では12.3m/s、最高出力が発生する6100回転より500回転高い6600回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.9m/sとなっています。
参考までにストロークが86.0mmのGC型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.75m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6980回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
GC型のエンジンを搭載する車種の例
メーカー 車両型式 |
イメージ | 車名&グレード 記事リンク |
出力 燃費 |
吸気 [駆動系] 車体形状 定員 |
---|---|---|---|---|
ジャガー J01GA |
![]() |
Sタイプ 4.0-V8 (2001/06) | 285ps 40.0kgm 7.1kmL |
NA [FR/5AT] セダン 5人乗り |