ここではクライスラーのPL20型の初代ネオン [LE] に搭載されているD型の自然吸気エンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
D型の自然吸気エンジン諸元
![]() PL20型 ネオン 主要諸元まとめ |
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車両型式 | E-PL20 |
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車名&グレード | ネオン LE |
エンジン型式 | D |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1996cc |
内径×行程 | 87.5mm×83.0mm |
ボアストローク比 | 0.95 |
圧縮比 | 9.8 |
吸気方式 | 自然吸気 |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
最高出力 | 134PS/6000rpm |
最大トルク | 17.8kgm/5000rpm |
まず基本的な成り立ちとして、D型エンジンはボア(内径)87.5mm、ストローク(行程)83.0mm、ボアストローク比0.95のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
このサイトにてD型の自然吸気エンジンを搭載している車種は、1996/06から発売された初代ネオン [1997/07](合計2台)が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 124.2PS → 134PS |
トルクの変遷 | 17.8kgm → 16.0kgm |
リッター馬力 | 67.13PS/L |
リッタートルク | 8.92kgm/L |
今回の参考車両であるネオンの直列4気筒1996cc、圧縮比9.8でレギュラーガソリン仕様の自然吸気エンジンは、6000回転のとき最高出力134馬力を、6000回転のとき最大トルク17.8kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する5000回転での馬力は124.2PS、最高出力が発生する6000回転でのトルクは16.0kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は67.13PS/L、トルクは8.92kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積499.1cc)あたりの出力は33.5PS、4.5kgmです。
排気量1リットルあたりの馬力が67.13PS/L、トルクが8.92kgm/LであるD型の自然吸気エンジンを、このサイトで登録している全てのNA車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 4 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。
排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
87.5mm | 83.0mm | 1996cc | 9.8 | 0.95 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
88.0mm | 83.0mm | 2019cc | 9.9 | 0.94 |
88.5mm | 2042cc | 10.0 | 0.94 | |
89.0mm | 2065cc | 10.1 | 0.93 | |
89.5mm | 2089cc | 10.2 | 0.93 | |
90.0mm | 2112cc | 10.3 | 0.92 | |
90.5mm | 2136cc | 10.4 | 0.92 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
87.5mm | 84.0mm | 2020cc | 9.9 | 0.96 |
85.0mm | 2044cc | 10.0 | 0.97 | |
86.0mm | 2068cc | 10.1 | 0.98 | |
87.0mm | 2093cc | 10.2 | 0.99 | |
88.0mm | 2117cc | 10.3 | 1.01 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の87.5mmから0.5mm刻みで+3.0mmまで拡大(87.5mm→90.5mm)した場合および、ストロークを純正の83.0mmから1mm刻みで+5.0mmまで延長(83.0mm→88.0mm)した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.95からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。D型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.95から0.92に変化するという具合です。
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが83.0mmのエンジンが最高出力を発生する6000回転での平均ピストンスピードは16.6m/sとなり、これは1秒間に16.6メートル(時速にすると59.8km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する5000回転では13.8m/s、最高出力が発生する6000回転より500回転高い6500回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は18.0m/sとなっています。
参考までにストロークが83.0mmのD型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.55m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7230回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
D型のエンジンを搭載する車種の例
全2件をアクセスが多いものから順に表示しています。メーカー 車両型式 |
イメージ | 車名&グレード 記事リンク |
出力 燃費 |
吸気 [駆動系] 車体形状 定員 |
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クライスラー PL20 |
![]() |
ネオン LE (1997/07) |
134PS 17.8kgm 15.6kmL |
NA [FF/5MT] セダン 5人乗り |
クライスラー PL20 |
![]() |
ネオン SE (1997/07) |
134PS 17.8kgm 11.8kmL |
NA [FF/3AT] セダン 5人乗り |