ここではキャデラックのX322V型2代目CTS セダン [CTS-V] に搭載されている6H型のスーパーチャージャーエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
6H型のスーパーチャージャーエンジン諸元
![]() X322V型 CTS セダン 主要諸元まとめ |
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車両型式 | ABA-X322V |
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車名&グレード | CTS セダン CTS-V |
エンジン型式 | 6H |
種類 | V型8気筒 |
排気量 | 6156cc |
内径×行程 | 103.2mm×92.0mm |
ボアストローク比 | 0.89 |
吸気方式 | スーパーチャージャー |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 564PS/6100rpm |
最大トルク | 76.1kgm/3800rpm |
まず基本的な成り立ちとして、6H型エンジンはボア(内径)103.2mm、ストローク(行程)92.0mm、ボアストローク比0.89のショートストローク型エンジン(ストローク量よりもピストン径のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ロングストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に劣り、扱いにくいエンジンとされるものの、高回転域では充填効率の向上や摺動抵抗の増大も(ロングストローク型に比べれば)軽微なことから出力の向上が見込まれます。
また同じ回転数でも平均ピストンスピードが抑えられることから、その分だけエンジンへの負荷は低減される傾向にあります。
このサイトにて登録されている車種のうち、6H型のスーパーチャージャーエンジンを搭載する最も古い車種は、2008/01から発売された2代目CTS セダン [2012/01]、最も新しい車種は2011/01から発売された2代目CTS クーペ [2012/01]となっており、全部で2車種(NA車0台・ターボ車2台)が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 403.7PS → 564PS |
トルクの変遷 | 76.1kgm → 66.2kgm |
リッター馬力 | 91.62PS/L |
リッタートルク | 12.36kgm/L |
今回の参考車両であるCTS セダンのV型8気筒6156ccでハイオクガソリン仕様のスーパーチャージャーエンジンは、6100回転のとき最高出力564馬力を、6100回転のとき最大トルク76.1kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する3800回転での馬力は403.7PS、最高出力が発生する6100回転でのトルクは66.2kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は91.62PS/L、トルクは12.36kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積769.5cc)あたりの出力は70.5PS、9.5kgmです。
排気量1リットルあたりの馬力が91.62PS/L、トルクが12.36kgm/Lである6H型のスーパーチャージャーエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 5 ]、換算トルクが[ 4 ]の「標準的な出力(中の下)のエンジン」にカテゴライズされます。
排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
103.2mm | 92.0mm | 6156cc | - | 0.89 |
ボアアップによる排気量拡大 | ||||
103.7mm | 92.0mm | 6216cc | - | 0.89 |
104.2mm | 6276cc | - | 0.88 | |
104.7mm | 6336cc | - | 0.88 | |
105.2mm | 6397cc | - | 0.87 | |
105.7mm | 6458cc | - | 0.87 | |
106.2mm | 6519cc | - | 0.87 | |
ストロークアップによる排気量拡大 | ||||
103.2mm | 93.0mm | 6223cc | - | 0.90 |
94.0mm | 6290cc | - | 0.91 | |
95.0mm | 6357cc | - | 0.92 | |
96.0mm | 6424cc | - | 0.93 | |
97.0mm | 6491cc | - | 0.94 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の103.2mmから0.5mm刻みで+3.0mmまで拡大(103.2mm→106.2mm)した場合および、ストロークを純正の92.0mmから1mm刻みで+5.0mmまで延長(92.0mm→97.0mm)した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
※ストロークアップと口で言うのは簡単なのですが、ロングストローク化するにあたってはクランクシャフトおよび対応コンロッドが必要になり、純正流用できない場合はワンオフで作らなければならないなど、とにかくお高く付きますので、手を出すには相当の覚悟を求められるメニューです。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくと0.89からさらに値は小さくなり、ショートストローク型の恩恵と弊害が顕著になっていきます。6H型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は0.89から0.87に変化するという具合です。
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが92.0mmのエンジンが最高出力を発生する6100回転での平均ピストンスピードは18.7m/sとなり、これは1秒間に18.7メートル(時速にすると67.3km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する3800回転では11.7m/s、最高出力が発生する6100回転より500回転高い6600回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は20.2m/sとなっています。
参考までにストロークが92.0mmの6H型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね6.15m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)6520回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
6H型のエンジンを搭載する車種の例
全2件をアクセスが多いものから順に表示しています。メーカー 車両型式 |
イメージ | 車名&グレード 記事リンク |
出力 燃費 |
吸気 [駆動系] 車体形状 定員 |
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キャデラック X322V |
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CTS セダン CTS-V (2012/01) |
564PS 76.1kgm 5.9kmL |
SC [FR/6AT] セダン 5人乗り |
キャデラック X322V |
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CTS クーペ CTS-V Coupe (2012/01) |
564PS 76.1kgm 5.9kmL |
SC [FR/6AT] クーペ 4人乗り |