ここではアバルトの312141型の初代アバルト500 [BaseGrade] に搭載されている312A1型のターボエンジンのデータを参考に、このエンジンが持つ特性や素性について調べてみます。
312A1型のターボエンジン諸元
![]() 312141型 アバルト500 主要諸元まとめ |
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車両型式 | ABA-312141 |
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車名&グレード | アバルト500 [BaseGrade] |
エンジン型式 | 312A1 |
種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1368cc |
内径×行程 | 72.0mm×84.0mm |
単気筒容積 | 342.0cc |
ボアストローク比 | 1.17 |
圧縮比 | 9.8 |
燃焼室容積 | 38.9cc |
吸気方式 | ターボ |
使用燃料 | ハイオクガソリン |
最高出力 | 135PS/5500rpm |
最大トルク | 18.4kgm/4500rpm |
まず基本的な成り立ちとして、312A1型エンジンはボア(内径)72.0mm、ストローク(行程)84.0mm、ボアストローク比1.17のロングストローク型エンジン(ピストン径よりもストローク量のほうが大きい)です。
排気量と気筒数が同一の場合、ショートストローク型に比べて低回転域でのトルク特性に優れ、扱い易いエンジンとされますが、高回転域では充填効率の悪化や摺動抵抗が増大して出力の低下が懸念されます。
なおかつ回転数も同一の場合、ショートストローク型に比べて平均ピストンスピードが高くなりがちなことから、エンジンへの負荷が大きくなる傾向にあります。
1気筒あたりのシリンダー容積と圧縮比を使って燃焼室容積を計算してみますと、今回の312A1型エンジンの場合の計算式は342.0cc÷(9.8-1)となり、燃焼室容積は38.9ccになります。
このサイトにて登録されている車種のうち、312A1型のターボエンジンを搭載する最も古い車種は2009/04から発売された初代アバルト500 [2010/06]、最も新しい車種は2013/01から発売された初代アバルト595 [2016/03]となっており、全部で4車種(NA車0台・ターボ車4台)が登録されています。
過渡特性とリッター換算馬力から見た評価
エンジン性能曲線のイメージ | |
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馬力の変遷 | 115.6PS → 135PS |
トルクの変遷 | 18.4kgm → 17.6kgm |
リッター馬力 | 98.68PS/L |
リッタートルク | 13.45kgm/L |
今回の参考車両であるアバルト500の直列4気筒1368cc、圧縮比9.8でハイオクガソリン仕様のターボエンジンは、5500回転のとき最高出力135馬力を、4500回転のとき最大トルク18.4kgmを発生させます。
馬力と回転数が分かればトルクが、トルクと回転数が分かれば馬力を知ることができますので計算してみますと、最大トルクが発生する4500回転での馬力は115.6PS、最高出力が発生する5500回転でのトルクは17.6kgmになります。
排気量1リットルあたりの馬力は98.68PS/L、トルクは13.45kgm/Lとなり、1気筒(単気筒容積342.0cc)あたりの出力は33.8PS、4.6kgmです。
排気量1リットルあたりの馬力が98.68PS/L、トルクが13.45kgm/Lである312A1型のターボエンジンを、このサイトで登録している全てのターボ車から集計した偏差値ベースの10段階評価に当てはめると、評価は換算馬力が[ 6 ]、換算トルクが[ 5 ]の「標準的な出力(中の上)のエンジン」にカテゴライズされます。
排気量アップと圧縮比の上昇、ボアストローク比の変化
ノーマルの排気量と圧縮比 | ||||
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Bore | Stroke | 排気量 | 圧縮比 | B/S比 |
72.0mm | 84.0mm | 1368cc | 9.8 | 1.17 |
ボアアップによる排気量アップ | ||||
72.5mm | 84.0mm | 1387cc | 9.92 | 1.16 |
73.0mm | 1406cc | 10.05 | 1.15 | |
73.5mm | 1426cc | 10.15 | 1.14 | |
74.0mm | 1445cc | 10.28 | 1.14 | |
74.5mm | 1465cc | 10.41 | 1.13 | |
75.0mm | 1484cc | 10.54 | 1.12 |
エンジンの排気量を決める要素には気筒数、ボア径、ストローク量の3つがあり、これらを増減することでさまざまな排気量のエンジンが生まれます。
ここでは実際に可能かどうかは別として、ピストン径を純正の72.0mmから0.5mm刻みで+3.0mmまで拡大(72.0mm→75.0mm)した場合の排気量と、燃焼室容積が変化しないと仮定した場合の圧縮比の変化を一覧表にしています。
圧縮比については、実際のところピストンが大径化するに伴ってピストン天面の凸凹容量も変化する場合が大半ですから、一覧表にある圧縮比の数値の通りにはなりませんが、排気量を大きくすると自ずと圧縮比も上昇しますよ、という雰囲気をご堪能ください。
B/S比はボアストローク比の略で、ボア径を広げていくとロングストローク型からスクエア型、あるいはショートストローク型の特性へと近付いていきます。312A1型エンジンの場合、純正ピストンから+3.0mmのボアアップをすると比は1.17から1.12に変化するという具合です。
平均ピストンスピード
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続きまして平均ピストンスピードについて見てみます。ストロークが84.0mmのエンジンが最高出力を発生する5500回転での平均ピストンスピードは15.4m/sとなり、これは1秒間に15.4メートル(時速にすると55.4km/h)の距離を進む速さでピストンが上下運動していますよ、という意味です。
最大トルクを発生する4500回転では12.6m/s、最高出力が発生する5500回転より500回転高い6000回転をレブリミットと仮定したときの平均速度は16.8m/sとなっています。
参考までにストロークが84.0mmの312A1型エンジンを10000回転/毎分まで回したときのピストンスピードの変化を計算してみました。これを見ると回転数が2000回転高くなるごとに概ね5.60m/sずつ速度が増していくようです。
大量生産を前提とした一般的なエンジンの目安である20.0m/sのみを基準として考えると、高回転化の上限を(回るか回らないかは別として)7140回転くらいにするのが機械的にも精神的にも好ましそうです。
312A1型のエンジンを搭載する車種の例
全4件をアクセスが多いものから順に表示しています。メーカー 車両型式 |
イメージ | 車名&グレード 記事リンク |
出力 燃費 |
吸気 [駆動系] 車体形状 定員 |
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アバルト 312141 |
![]() |
アバルト500 BaseGrade (2010/06) | 135ps 18.4kgm - |
TB [FF/5MT] ハッチバック 4人乗り |
アバルト 312141 |
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アバルト595 Competizione (2016/03) | 180ps 23.5kgm 13.8kmL |
TB [FF/5MT] ハッチバック 4人乗り |
アバルト 312142 |
![]() |
アバルト595 Competizione (2016/03) | 180ps 23.5kgm 13.6kmL |
TB [FF/5AT] ハッチバック 4人乗り |
アバルト 312141 |
![]() |
アバルト595 Competizione (2015/03) | 160ps 21.0kgm 14.5kmL |
TB [FF/5MT] ハッチバック 4人乗り |